【動画】フジテレビ生放送事故
事件の舞台となったのは、フジテレビの深夜の音楽番組「ヒットスタジオR&N」。前年の1988年、「RCサクセション」の反原発アルバムが発売中止になる騒ぎがあった。この際、FM東京がいち早く放送自粛をしたことの抗議だった。別の曲をFM仙台が放送禁止にしたことに対する抗議でもあった。
ロックバンド「タイマーズ」
1989年、フジテレビ系のテレビ各局で、深夜音楽番組「ヒットスタジオR&N」が放送された。
この番組で1989年10月14日未明、出演中のロックバンド「タイマーズ」が、FM東京を「最低のラジオ」などと中傷する曲を歌った。
番組は午前1時10分から系列ネット局に生放送された。司会者は古舘伊知郎だった。
「タイマーズ」の5曲メドレー中の2曲目に予定されていた「偽善者」という曲に代えて突然「FM東京腐ったラジオ、何んでもかんでも放送禁止」などとひわい語を交じえた曲が歌われた。
リハーサルと違う歌詞
「タイマーズ」は、「偽善者」を歌う予定でリハーサルも済ませていた。ところが、演奏が始まると、以下のような中傷的な歌詞を歌った。
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FM東京 腐ったラジオ
FM東京 最低のラジオ
何でもかんでも放送禁止さ
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この日はキー局のフジテレビだけが番組開始1時間遅れの録画放送となっていた。
問題の場面の録画もそのまま放映された。
「タイマーズ」は「RCサクセション」の忌野清志郎氏が新結成した覆面バンドだ。
反原発アルバムが発売中止
「RCサクセション」の原発問題(反原発)を扱ったアルバムが1988年に発売中止になる騒ぎがあった。反原発ソングを歌ったのはロックグループ「RCサクセション」。その中心メンバーの忌野清志郎が、今回の「タイマーズ」でボーカルを担当している。
東芝EMIと電力会社の関係
反原発アルバムの発売元は、東芝EMIである。1988年6月に発売中止を決めた。ちなみに、東芝EMIの親会社の東芝は原発メーカーである。また、原発を運営する東京電力などの電力会社は、東芝にとって主要取引先(大事なお客さん)である。
この発売中止騒動の際、FM東京は、いち早くRCサクセションの反原発ソングを放送自粛にした。
テレビ生放送での中傷は、この放送自粛に対する抗議ではないかと推測された。
動画
FM仙台の放送禁止にも抗議
歌の最後に、タイマーズは「何が27局ネットだ、FM仙台……ざまぁみやがれ」とも叫んでいた。これは、FM仙台の放送禁止に対する抗議だった。
1989年9月3日、ロックバンド「ティアドロップス」の「谷間のうた--素敵な泉」が発売された。忌野の作詞だ。
この歌詞に問題があるとして、FM仙台が8月下旬、放送を禁止した。FM東京でも同じころ、局内に「放送は望ましくない」との張り紙が出た。
忌野の今回の抗議は、反原発ソングに加えて、「谷間のうた」の扱いに対するものだった、という。
「谷間のうた」の1節には、「甘い香りにさそわれて ツボミにそっとキスをする 岸辺の草ムラさわってたら……」と始まる。解釈のしようによっては、ひわいな意味にも解釈できる内容が続く。
FM東京は「放送するなとの指示はしていない」と、忌野側の主張を否定している。
一方、FM仙台は、社内基準に照らして「放送にはふさわしくない」と判断したという。FM仙台は1982年(昭和57年)の開局以来、放送禁止はほとんど例がなかったという。
謝罪
タイマーズのレコードを発売している東芝EMIは1989年10月16日、FM東京とフジテレビに謝罪した。
フジテレビは、FM東京に対し「ご迷惑をかけて申し訳なかった」と陳謝した。信頼関係を覆すことがないよう「強く呼びかける」ことをスタッフに指示した。
後にフジテレビ社長になる村上光一・編成局長
後にフジテレビ社長になる村上光一・編成局長が以下のコメントをした。
リハーサルをやりながら本番でいきなりこのような事態になって遺憾だ。FM東京をはじめ関係者にご迷惑をかけ大変申し訳ない。